勧進帳 歌舞伎座・11月

今の幸四郎の父・初代松本白鸚(まつもと・はくおう)の三十三回忌追善公演。父や祖父を偲んでの公演が行われるのも、代々続く歌舞伎ならでは。
十一月の歌舞伎座では、市川染五郎が、父・松本幸四郎の富樫、叔父・中村吉右衛門の義経を相手に、『勧進帳』弁慶に挑むのが話題。染五郎には曽祖父に当たる七代目・幸四郎は生涯に1600回以上『勧進帳』の弁慶を演じ、祖父の八代目(初代・松本白鸚)も当たり役にした。父、九代目も、この役を1100回以上演じている。松本幸四郎家(屋号:高麗屋)にとって、四代目の「弁慶役者」の登場である。

ストーリーはシンプルだが、その分、演技の腕や役者の魅力が問われる芝居だ。兄の源頼朝に追われ、家来の弁慶ともども山伏の姿に変装して、各地に設けられた関所を潜り抜けながら、東北へ落ち延びようとする源義経。しかし、安宅(現在の石川県)の関を守る富樫左衛門に変装を疑われ、通行を止めら義経一行を襲った絶体絶命のこのピンチを、弁慶がどう乗り切るのか…。
弁慶は、幕が開いて間もなくの登場から、幕切れの「飛び六法」と呼ばれる花道の引っ込みまで、一瞬たりとも気を抜けず、心身ともに膨大なエネルギーを必要とする大役だ。

父と叔父に挟まれたプレッシャーを撥ね退けて、弁慶の胆力をどこまで見せられるか、それが大きな課題だが、今までの修行を一気に花開かせる機会でもある。こういう舞台はワクワクするものだ。


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