第2回 歌舞伎は実際に観てみると、???がいっぱい!

「独特だから面白い」。そこが歌舞伎の醍醐味

株式会社トッカヴィル(以下T)
では実際に、歌舞伎を初めて観るときには、どんなことに注意していけば、 ….堅苦しい言い方ですね、すみません、もとい、どのようにすれば楽しめるのでしょうか?

中村義裕(以下N)
そうですね、「まず何を観に行くか」ですが、歌舞伎に詳しい人がいれば、「これどんな話?」とか「どれがおすすめ?」とか、聞いてみるといいですね。
でも「そんな人、周りにいないよ」という方も多いと思うので、その場合は、これから始まる「歌舞伎カフェ」の記事を参考にしてもらえればいいかな。

T
「歌舞伎カフェ」では、これから上演されるおすすめの演目のストーリーや見所を紹介します。
これは本当に参考にしてほしいですね。(※注5)

N
はい。チケットを取る際の参考になるように、そして実際に観た時に内容がわからなくてポカーンとならないように、わかりやすく私なりの視点で、おすすめの公演や演目を紹介していくつもりです。

T
私達も楽しみです!

N
歌舞伎は、何と言っても400年以上続いている芸能で、現在上演される演目の数だけでも約300、いろいろな種類に別れています。
これらを「時代物」、「所作事」(舞踊)、「世話物」、などと呼びますが、
詳しくはまた別のコーナーでおいおい説明することにしましょう。
まず最初に見るなら、『俊寛』や『勧進帳』はドラマ性に優れていますし、踊りなら『娘道成寺』などは華やかですいいですね。
などでしょうか?
歌舞伎のストーリーは、場合によっては複雑な物や、人物関係が混み入った長い物もあります。やはり、最初に観るならよりわかりやすいものが良いでしょうね。

夏に見るなら、難しいことは抜きの怪談物、などもおすすめですね。仕掛けも派手で、早替わりあり、場合によっては舞台に大きな水槽を作って、本物の水、「本水」(ほんみず)と言いますが、そうした涼やかな演出もありますし。

何度も劇場へ通い出すと、同じ演目を2回観ることがあるかもしれません。そういう時に、「良く分からないけど、前とは何か違うな…」とか、「あ、前回より派手な感じになった」、「今回はここを現代風にアレンジしたのだな」など「自分の発見」があると、嬉しくなって「ハマって」いく一つの大きなきっかけになりますね。ただ、余り歌舞伎の批評の専門家が増えても困りますが(笑)

T
もう、見れば見るほど、自分の中で楽しめる訳ですね。

N
そういうことですね。

T
「歌舞伎の見方」の極意、ってあるんですか?

N
うーん。「ある」とも「ない」とも言えますね。
これは、いずれ詳しくお話しましょう。ただ、せっかく前もってチケットを買って、その日を楽しみにして出かけるわけですから、幕が開いたら、舞台を信頼して、自分を委ねてしまうのがいいんじゃないでしょうか。
私の場合は、どうしても「批評家の眼」で歌舞伎を観てしまいますから…。

T
そういう考え方もあるんですね。
歌舞伎を初めて観た時に感じたのは、コメディの要素の多い演目だったこともあるのでしょうが、実力のある役者さんが演じると、多少言葉の意味がわからなくても、こうも笑えるのだと驚いたのです。
比べたら双方に失礼なのですが、テレビで観るようなコントとは大違い。
息の合った、そして時にアドリブなのかな?そういった掛け合いもテンポも気持ちよくて。

N
なるほど。

T
それから激しく動いている役者さんのその素晴らしさは、言うまでもないのですが、
止まっている役者さん、私が観た演目ではおそらく….20分以上、ぴたりとも動かない役者さんたちがいて、これは凄いなと思ったのです。
やはり普通の人とは身体の鍛錬が違うのだと。
きちんとした姿勢でじっとしているのって難しいのですよね。私は特に落ち着きが無い方なので….(笑)

N
歌舞伎をまだそれほど観ていないとおっしゃっていましたよね。
そこに気がついたのは凄いことですね。
歌舞伎では「動かない」ことも重要な芸の一つなのです。芝居を中心でしている人の邪魔にならずに、お客様の注意を集中させるためにも。演目によっては、主役の相手役でじっと座ったままで心情を表現しなければならない難しい役もあります。

T
おぉ、先生に褒められた!嬉しい。
うまく言えませんが、日本人には、“止め”への独特の美意識とうか、
瞬間の美しさを求めるところってありますよね。
浮世絵もそうだと思うのですが、1枚の絵の中には物語の時間を感じられるくらいの動きが感じられるのに、その動いている一番美しい瞬間を封じ込めているような。
歌舞伎にもやはりそういった感覚はあるのでは?と思うのですがいかがですか?
たとえば、なんと言うのかわからないのですが、
「ここ見て、ここ見て ほら今このポーズ!」ドドーーン!みたいな(笑)
ぐぐぐっと力んでから、ぐいいーーーっと止まって、お客さんが一斉にわーっと拍手する、みたいなときありますよね。

N
そうですね 「見得」のことですね。。
確かに、「見得」は「ここだっ!」という見せ場の時に、「ツケ」と呼ばれる柝が打たれ、「バッタリ」と大きな音がしますから、観客の注意もそこへ集中します。これは、言わば「ストップモーション」の美ですね。その役の一番いい恰好の瞬間を、お客様に見せる、という。また、舞踊にように、音楽に合わせながら身体が止まることなく動いてゆく中で見せる「流れる美」もありますね。舞台の端々に、いろいろな形の「美」が存在しているのも、歌舞伎独特の物かもしれません。いろいろな意味で、こんなに贅沢で豪華な演劇は他にはなかなかないでしょうね。

T
なるほど。「独特だから面白い」。そこが歌舞伎の醍醐味なんですね。

(※注5) 歌舞伎カフェ 中村義裕の「次に観る歌舞伎はこれだ!」


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