第1回 歌舞伎役者は江戸時代からスーパーアイドルです!

まだ暑い夏の都内某所。
「歌舞伎カフェ」総監修、歌舞伎なんでも博士の中村義裕先生と、サイト運営を担当するトッカヴィルで、 「歌舞伎カフェ」のオープン記念ということで対談を致しました。
対談当日は歌舞伎座近くのとある居酒屋
こうやってしっかり時間をとってお話しするのは、今回が初めて。
中村先生は、秋に出版される本の入稿を済ませた後に駆けつけ、一山越えた後の対談という事で、歌舞伎についての四方山話、そして「歌舞伎カフェ」の今後の展望について、大いに盛り上がりました。

株式会社トッカヴィル(以下T)
先生、本日は「歌舞伎カフェ」のオープン記念の対談ということになりました。あらたまってこういうかたちでじっくりお話するのも照れますが、よろしくお願いいたします!

中村義裕(以下N)
こんにちは。こちらこそよろしくお願いいたします。

T
まずはこのサイト、「歌舞伎カフェ」の紹介をさせてください。
「歌舞伎カフェ」では、歌舞伎に興味があるけれどまだ実際に観劇したことのないみなさん、そして歌舞伎を見たことはあるけれど、もっと深く楽しみたい!という方に向けて、情報を発信していくサイトになります。

N
それは責任重大ですね。
ただ、歌舞伎だって、江戸時代の「大衆演劇」なのです。400年の時間を経て、分かりにくい言葉が多くなっていますが、歌舞伎を貫く精神は、今も昔も大衆演劇なのです。もっと気軽に、そして深く楽しめるように、その魅力をお伝えできるように頑張りましょう!

T
はい。がんばります。 突然ですが、先生の歌舞伎との出会いっていつぐらいなのでしょうか?

N
私が最初に歌舞伎を自分の意志で観たのは中学生の時ですから、もう40年近く前のことになりますね。そこで、「いい舞台」に出会えたのが幸福だったんでしょうね。そのまま歌舞伎の虜になり、気が付いたら仕事になっていました。と言うよりも、自分では歌舞伎を演じることはできませんから、その面白さ、魅力を何とかして一人でも多くの方々に伝えたい、ということで「演劇評論家」という厳めしい名前の仕事になってしまったんですね。

T
そんなにお若い時から! 

N
歌舞伎だけでも、もうかれこれ2000本くらいは見ているでしょうね。もちろん、同じ演目を何回も何十回も観て来ましたから、延べで、ということですが。
私は歌舞伎に限らず演劇全般を批評するお仕事をしていますので、年間200本程舞台を観ています。今までの観た総舞台数は6000本くらいにはなるんじゃないでしょうか。。

T
6000本!!
確かに、先生と連絡を取ろうとすると、いつも日本のどこかの劇場にお芝居を観に行ってらっしゃいますもんね 笑、

N
ええ。東京近郊の劇場だけでなく、なるべく全国、そして大小に限らず足を運んで生の舞台を見るようにしています。同じ芝居でも演じる場所が違えばお客さんの反応も違いますしね。

T
だいたい観劇したその日のうちに批評も書いてらっしゃいますしね。
先生の歌舞伎以外のコラムも拝見させていただいております。(※注1)
ところで先生は、歌舞伎役者さんとの交友関係も深いですね。

N
そうですね。お金には恵まれませんでしたが、「人」には恵まれました。一流の役者さんは人間的にも素晴らしい方が多いですし、若い役者さんには、その柔軟な発想に教えられることもあります。舞台を通じ、役者さんとの交友を通じ、学んだことは大きいですね。それが私の財産です。

T
歌舞伎役者とは、どんな方々なのでしょうね? 休日でも決してジャージとかで過ごしていなさそうなのですが…. なにやらストイックなイメージがあります….

N
ジャージ、ですか(笑)。オフの過ごし方までは知りませんし、中にはそういう方もいらっしゃるでしょうが、皆さん普通の方々ですよ。ただ、「人に観られる」「人に見せる」ことが仕事ですから、皆さんのイメージ以上に自己管理には気を遣っているようですね。。
舞台が始まったら約1ヶ月間は、休演日もありませんし、ほぼ一日中劇場にいるわけですからね。一つの公演が終われば次の舞台のお稽古をしていますし、舞踊や邦楽をはじめとしてさまざまな勉強をしなくてはいけませんし、歌舞伎以外の仕事もあるし。場合によっては、公演中に芝居が終わってから翌月の稽古をすることもありますし。…. あれ、聞いているだけで疲れちゃいました?(笑)
とにかくハードですね。

T
若い役者さんだけではなく、大御所の役者さんも、
かなりハードなスケジュールで舞台をこなしていますよね。
片岡仁左衛門さんが復帰後のインタビューで「体を整える」という言葉を使っていらっしゃったのですが、まさにその通り、つねに整えていないと一ヶ月の舞台など乗り切れないですね。

N
そうですね、公演期間は一ヶ月近くあっても、観に来てくださるお客様はその日一回ですから、常にベスト・コンディションを保つような努力は並大抵ではないと思いますよ。「有給休暇」があるわけではありませんから、「今日は休みます」というわけには行きませんしね。。

歌舞伎の楽しみ方の一つとして役者さんに注目する。というのも良いでしょうね。
AKBの「推しメン」ではないですが(笑)、まずは自分の好きな役者さんを見つけることですね。

T
なるほど。そういう見方は、確かに入りやすいですよね。スポーツやアイドルと同じですね。

N
そうですね。歌舞伎役者は江戸時代からスーパーアイドルですから(笑)

T
は! 確かにそうでした! 歌舞伎座の3階で生写真も売っていました!笑
そういう意味では、歌舞伎役者さんが、TVやCM、映画など歌舞伎以外のフィールドで活躍してくれるのは、まだ歌舞伎に触れた事がない方々にとっては出会うきっかけができて良いことですね。
最近ですと、片岡愛之助さんがいろいろなフィールドで活動していらっしゃいますね。

N
そうですね。精力的にがんばっていますね。
他分野への出演などは、役者としての修行という事以外にその他諸々、意味があるのだろうけど、みなさん本当に心から「少しでも歌舞伎に興味を持ってくれたら」と、がんばっていますね。
私が今まで観て来た歌舞伎役者について「役者列伝」や、別の機会にゆっくりお話しましょう。それだけでも一週間か十日は覚悟してくださいね(笑)(注2)

T
はい 役者さんの話はみなさん楽しみにしていると思います。ぜひお願いします。

実は私も、歌舞伎を見始めたのは数年前からです。数えるほどしか見ていませんので、まだ初心者です。
見る前はやはり「難しいそう」とか「なにか特別なルールがあるのか」とか、果ては「自分が行ってもいいのか!?」などと思って二の足を踏んでいました。
しかし実際に行って見ると、これが実に面白くて。見た演目がたまたま少しコメディ要素の多いものだったのも幸いしました。幕間にお弁当を食べたり、お土産を買ったりと、「なんだ、歌舞伎ってこんなに楽しいんだ」って思ったのです。

N
そうですね。そういった意見や質問はよく聞きますね。
「ところで、チケットってどこで売っているの?」とか、
「特別な作法がいるの?」とか 笑

T
ええ、そう思いますよやっぱり 笑
「お茶」とか「お花」みたいに作法と言うか、しきたりのようなものがあるのか、とか?
だって日本の伝統文化ですし。

N
まったくいりません。だって、「お茶」や「お花」は、自分自身でやるからいろいろ必要ですが、歌舞伎は観るだけで、ご自身では実際にやりませんよね?

T
いいえまさか!観るだけです、
なるほど….でもそうですね。歌舞伎はただ観るだけですもんね 笑

N
そうそう、難しく考えてしまうと観る前に疲れちゃいます。
歌舞伎は決して堅苦しいものではないのです。

T
素人目には、歌舞伎の世界って話題にはなるのだけれど、なんとなく閉鎖的な感じがして….。
観に行こうと思っても、とにかく演目の題名も読めない、内容もよくわからない、役者さんの名前も似たようなものばかり、しかもみんなメイクしているから、普段TVやCMで見ている方なのに全然一致しない….笑

N
名前と顔ね、….名前も襲名すると変わるしね 笑
そうですね、歌舞伎を観る、という事自体は決して「難しくはない」のですが、確かにそういった「わかりにくさ」はありますね。
そのあたりが一見さんお断りのような感じを与えてしますのでしょうね。

私は歌舞伎を楽しむための講座を開催しているのですが、そこで一番最初に申し上げるのは、「歌舞伎を分かろうとしないでください」ということです。「面白いな」とか「良く分からなくて眠くなっちゃった」とか「あの女形さん、綺麗だな」と、「感じてください」と申し上げています。私は、歌舞伎への入り口はそれでいいのだと考えています。(※注3)
ただ、私の講座は、必ず受講生の方々とと一緒に観劇をするんですよ。、その際には、前の週に見どころや息抜きしてもいい場面などをこっそりお教えして、簡単な演目の解説を生徒さんに渡します。
そこに、ストーリー解説や役者さんの情報はもちろん、演目の上演時間や、終了時間も記載しています。
そういうことで、少しでも観劇する前の情報を増やして差し上げたいと思っているのです。

T
それはいいでね。以前見たとき、意外に長い演目で、「おいおいこれ何時に終わるんだ」とか思って観ていましたもん。(笑)

N
不安ですよね。トイレも行きたいしね。おなかもすくしね。
「歌舞伎カフェ」では、みなさんの歌舞伎に関する質問に私が答えるコーナーもありますから、
どんどん質問してほしいですね。一番いけないのは、「こんな質問してもいいのかな?」という遠慮です(笑)(※注4)

T
そうですね。お待ちしています。

(※注1)演劇評論家・中村義裕先生のオフィシャルサイト「演劇批評」
(※注2)歌舞伎カフェ「歌舞伎役者列伝」では歌舞伎役者の知られざる素顔に迫ります!
(※注3)中村先生は「演劇サロン」など、歌舞伎に限らず広く演劇に関する講演を行っています。
(※注4)歌舞伎カフェ「教えて中村先生!」では歌舞伎に関する質問を募集しています!


投稿日

カテゴリー:

,

投稿者:

タグ: