「よしかたさいご」と読む。平家が権力を誇っていた時代、病気で自分の館に籠っていた木曾義賢。 側に仕える奴・入平が、実は源氏再興のチャンスを狙っていた武将だと見抜き、自分も本心を明かす。
そこへ、平清盛からの使者が登場し、義賢を屈服させようとするが、怒り狂った義賢は使者を切り捨て、平家の軍勢に攻め込まれる。ここから幕切れまでが見どころの「大立ち回り」になる。
敵にやられ、満身創痍の血だらけになった義賢が、最期の力を振り絞って「戸板倒し」「仏倒し」など、名前を聴いただけでは分からない、全身を使った迫力のある立ち回りを見せる。
この場面、本来は『源平布引滝』(げんぺいぬのびきのたき)という長い芝居の一部分で、現在ではこの芝居の中からは『実盛物語』が上演されるが、『義賢最期』は余り上演の機会がなかった。
それを、片岡愛之助の伯父である片岡仁左衛門が若い頃に上演し、当たり役にした物を、愛之助が引き継いだ形だ。とは言え、愛之助は仁左衛門のコピーを演じているわけではない。
仁左衛門にはない線の太さや豪快さを持ち合わせた武将が最期の命を燃やして闘い尽くすさまを熱演するはずだ。こうして、古典作品に新しい命が吹き込まれてゆくのだ。