この間、ニュースで京都・南座の「顔見世の『まねき』と言っていましたが、あれは何?」

おっ、タイムリーな質問ですね。京都では、毎年十二月に「吉例師走顔見世興行」という歌舞伎の公演が行われています。東西の役者が顔を揃えて、豪華な舞台を見せる公演は、師走の京都の風物詩になっています。

初日が近付くと、南座の正面に、出演する歌舞伎役者の名前を書いた「まねき」と呼ばれる高さが約2メートルの木の看板が掲げられます。お客さんがたくさん入るように、との意味を込めた「まねき」は、看板の上に「入」という文字の形の屋根が付いており、歌舞伎独特のうねるような「勘亭流」という太い文字で黒々と役者の名前が書いてあります。
「白」は客席が空白、を意味するので、なるべく白い部分を少なく、大入り満員を祈って、太々と描くのです。

この「まねき」の並べ方には江戸時代から決められていた順番がありました。右から二枚目には、色男の役を演じる役者、三枚目には喜劇的な要素を持った役者の名前を書きます。今は「イケメン」という言葉に変わりましたが、美男子のことを「二枚目」と言うのは、ここから来たものです。「三枚目」も同様ですよ。

「まねき」には、役者の名前の家に、「家紋」も描かれています。ずらりと三段に並んだまねきはなかなか壮観な風景で、歌舞伎座でも国立劇場でも観られない、京都独自の光景です。それが、古都に馴染んでいるのは、「出雲の阿国」がかぶき踊りを始めた場所に近いせいでしょうか。そう言えば、南座の角には、「阿国歌舞伎発祥の地」という石碑が立っています。

紅葉に彩られた秋の京都の美しさは言うまでもありませんが、師走に京都へ歌舞伎を観に出かける、というのも楽しいものです。場所によっては、名残の紅葉が見られる事もありますよ。


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