舞台に出て来る黒ずくめの人は何?

見逃しそうなところに良く目を付けた質問ですね!
あれは、「黒子」(くろご)と呼びます。
歌舞伎では、全身黒ずくめで舞台に出て来る「黒子」は、「観客には見えていないもの」という暗黙の約束があります。

黒子は、基本的にはその役を演じている役者のお弟子さんが勤めます。
小道具を観客には見えないようにスムーズに受け渡したり、ちょっとした隙の間に衣装の乱れを直したり、汗を拭いたり。
役を演じている師匠が、いかに気持ちよく、お客様に良い形で芝居を見せられるか、に心を砕いています。

役者も人間、咄嗟に科白を忘れることもあります。
そんな時は、懐に忍ばせた台本を取り出し、すかさず、後ろから目立たぬように科白のきっかけを教えたり。
これだけの仕事をしながら、「目立ってはいけない」のが鉄則です。
目立たない黒子ほど、腕がいい、ということになりますね。
それほどに、自分の師匠に心酔しているかどうか、ということでしょうね。

歌舞伎を何度も観ていると、最初は視界に入って気になって仕方がなかった黒子も、
不思議なことにだんだんと気にならなくなってくるものです。

黒子が見えないという約束事が不自然に思えなくなったか、黒子の腕が良いか、のどちらかでしょうね。
他のお芝居では観られない光景ですが、これも江戸時代から続く先人の工夫の一つ、と言えるのかもしれません。


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