同じ演目でも、演じる役者さんによって、違う内容になるのでしょうか?

素朴ですが、重要な疑問ですね!違いますよ!そこが、歌舞伎の魅力の一つでもあるのです。

「名作」と呼ばれる作品は数多く、何人もの役者さんが手がけています。例えば、人気の『勧進帳』。江戸時代の作品ですが、今までに延べで何万回上演されたか、わからないほどです。しかし、それほどに上演されるのは、歌舞伎の作品として面白いからだけではなく、役者によって舞台が微妙に違う、その味わいを楽しむことにもつながっています。

『勧進帳』の弁慶を1100回以上演じている松本幸四郎。極端に言えば、そのすべてが微妙に違っており、二度として同じ舞台はない、と言ってもよいでしょう。相手役の富樫左衛門が、市川團十郎、中村吉右衛門、尾上菊五郎、市川染五郎と役者が変われば科白の間や「イキ」も変わって来ます。

また、演じる場所も歌舞伎座、国立劇場と新橋演舞場、あるいは京都の南座、大阪の松竹座では舞台や花道の寸法が違います。地方公演で各地を回る場合は、花道の設備がない公民館などもあります。演じる場所の環境によって、日々同じ芝居になるとは限りません。

また、同じ劇場、同じメンバーで25日間の公演を行っていても、観客は毎日違いますし、役者のコンディションも日々変わります。体調が優れない時もあるでしょうし、芝居の神様が降りて来たように感じる時もあるでしょう。

舞台はジャンルに限らず、一回一回が違うものです。その味わいを楽しむのが魅力ではないでしょうか。好きな方は、初日近く、中日(なかび)近く、千秋楽近くと、一ヶ月の公演を何度も観に行くケースがあります。そうして舞台が変わってゆくことが、生の舞台の醍醐味なのです。

皆さんも、気に入った舞台があったら、同じ月にもう一度ご覧になって、印象を比べてみてはいかがでしょうか?


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