子供だと女性でも歌舞伎の舞台に立てるのですか?

なかなか鋭い質問ですね! 子役の性別まで観ていたとは…。歌舞伎は、女性の役を「女形」が演じ、舞台の上は全員男性というのが原則です。ただ、その唯一の例外が子役の女の子、と言えるでしょうね。

歌舞伎役者のお嬢さんの場合もあれば、子役専門の劇団に所属しているケースもあります。ただ、子役以外は女性が舞台に立たないのが現在の歌舞伎です。

「現在の」と申し上げたのは、明治時代に、女性でありながら歌舞伎役者として歌舞伎の舞台に立った人がいたからです。これは、歌舞伎座ではなく、今はなくなってしまった劇場でしたが、三代目坂東玉三郎という役者は女性でした(今の玉三郎との血縁関係はありません)。

アメリカの万国博覧会へ出演するために渡米し、若くしてアメリカで病死してしまいましたが、成人女性として歌舞伎役者であった稀少な例、と言えるでしょうね。

歌舞伎が「男性だけ」に限られているのは、一つは歴史的な側面で、女性が歌舞伎を演じることが禁止されたためです。しかし、私はもう一つ、切実な理由が後に発生した、と考えています。

例えば、歌舞伎十八番の『助六』。主人公の助六の恋人である花魁の揚巻(あげまき)は、絢爛豪華な装いで花道から登場します。「立兵庫」(たてひょうご)と呼ばれる大きな鬘から、黒の塗下駄までの総重量は40キロ!とも言われています。

これだけの重さの衣装などを身にまとって動き、芝居をするには、男性の肉体や体力を持っていないと、とても勤まらないほどにハードな肉体労働だから、女形が必要であり、男性が演じなくてはならないのだ、と考えています。

現在の男女雇用機会均等の考えからすれば差別に当たるのかもしれませんが、そうした感覚のない時代のこと、男性の肉体でなければ…と考えたのではないか、と私は想像しています。


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