『口上』 2月松竹座公演 昼の部

見どころ紹介、たまには東京を離れ、歌舞伎のふるさと・京都に近い大阪・松竹座へ。 先月から二ヶ月にわたって行われている四代目中村鴈治郎(なかむら がんじろう)の襲名披露公演へと参りましょう。

歌舞伎は、代々親や師匠の名前を名乗る「襲名」が付き物。多くは、自分の父親が名乗っていた名前を名乗るケースで、今回は上方歌舞伎の雄・「中村鴈治郎」の襲名です。初代は明治から昭和初期にかけて大阪の人気をさらった役者でした。このたび、四代目を襲名する中村翫雀(なかむら かんじゃく)は、そのひ孫に当たります。

襲名披露公演に付き物なのが、『口上』(こうじょう)。新しい名前を名乗る本人を舞台中央にして、幹部の役者が裃姿でズラリと並び、お祝いの言葉や、本人の人柄を楽しく紹介する「寿ぎ」(ことほぎ)の一幕。芝居をするわけではありませんし、大体が15分から20分と短い時間です。

上方はギャグのセンスも濃く、こうした『口上』も、時には爆笑の渦に包まれることもしばしば。緊張のあまり本人が絶句したり、この場限りと旧悪をばらされたり。役者と舞台が一体感を持って、新たな名前の誕生を祝う瞬間です。

『口上』には、襲名と、亡き名優を偲ぶ「追善」(ついぜん)との二種類があります。かつて、追善の口上の時に、長老の役者がその思い出を語り、「明治43年のことでしたか…」と言ったのに、客席から暖かい笑いが起きました。そのベテランの人柄と、エピソードの余りの古さに、みんなが驚いたのでした。


四代目中村鴈治郎 襲名披露公演
『口上』(こうじょう)
大阪松竹座 二月大歌舞伎
平成27年2月1日(日)〜2月25日(水)



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